宮崎にて

月がでている。

満月。

ほとんど傾いて海に落ちながら照らす。

雲はない。

凍りそうに冷えた空気に もやが立つ。

黎明 太陽が支配しつつある空は薄赤く染まる。

それは、太古 海に生きた生物が陸に上がる光景。

月明かりと黎明の空に照らされ、幾筋もの影が砂浜に向かう。

それは砂浜近くで命を得る。

生き物か・陸に向かう生き物たちを引き戻そうとする、母なる海の悋気に満ちた手なのか。

波、波。

粘った波だ。 物理の法則にあらがうように 波は立ち上がりそしてくずれることなく砂浜へ押し寄せる。

絶対なエネルギーを秘めて。

粘りを含んだ波が、その呪縛から解き放たれ静かに静かにその頂点からくずれはじめる。

押し寄せる波の早さは高まる。

生物の繁殖のエクスタシーに似て・・・・。

粘っこい波は 意外にも暖かい。

音は・・・。音はしない。

静寂の中 波という生き物がついと立ち上がる。

黎明と月明かりが作り出す淡い光の影・・。波の影・・。

彼らのエクスタシーの調和の中に、魂を解き放つ。

私が加速する。

落ちる 落ちる。落ちて加速する。

落ちて、落ちて あがる。

落ちた加速度の数倍の重力を解き放て。

黎明の星空へ向かって・・。

そして 暗黒の海底へさらに加速 加速。

落ちる重力に相乗の魂のほとばしりを加えて、月へ。

宇宙へ向かって飛び上がれ・・・。

あがく、あがく、重力の呪縛から解き放たれるために 自由のために あがく。

のたうつ、のたうつ。

また暗黒への重力の呪縛。

さらに落ちよう 落ちよう。

落ちて 早くなれ、暗黒の呪縛へ落ちよう。

加速は、肉体を離れ 意識だけになる。

暗黒を見た意識に 一条の光。

意識は光に向かう。 

暗黒の加速を味方につけて、波を離れ、海を離れ、意識は天空に・・・。

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